教組の花嫁
10話 本当の父親

 ほのかは、本妻の泰子の住まいを訪れようとしていた。


 今朝、ホテルで目が覚めるまでは、教祖室に最初に訪れるつもりでいたが、気が変わったのだ。


 (ひとりよりも二人で攻めたほうが、攻めやすい。泰子が味方に付けば、鬼に金棒だわ)


 ほのかはそう考えて、泰子の家のチャイムを押した。


 「誰かと思たら、あんたかいな」


 玄関のドアを開けながら泰子が呟いた。


 「ご無沙汰しています、ほのかです。今日は奥様に、折り入ってご相談したい事がございまして」


 ほのかが低姿勢になって言った。


 「まあ、そんな所では何やから、中で話を聞こか」


 二人は30畳はゆうにある、広いリビングの応接セットの椅子に腰掛けながら話を始めた。







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