教組の花嫁

 道心が小波に話し掛けた。


 「泉の底の一点を見続けているかね」


 道心の言葉で小波は我に返った。


 「ははい、教祖様」


 慌てて小波が返事をした。


 「この部屋は瞑想をし易いかね」

 道心が小波に尋ねた。


 「はい、とってもし易いです」


 「気に入ったのなら、これからもこの部屋を自由に使ってくれても構わないよ」


 「本当ですか、教祖様」


 「本当だよ。でも、私はいつも君の相手は出来ないが、それでもいいのなら、好きにしてくれたまえ」


 道心は凛々しく、しかも優しかった。


 「ありがとうございます」
 
 小波が道心に礼を言った。


 (教祖様は、本当に尊敬出来る素晴らしい人だ)


 小波は過去を思い返しても、母がなぜこの宗教を恨んで死んだのか、本当に良くわからなかった。






< 42 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop