LOVE PRINCESS(壱&沙耶)
ホントのキモチ



「……沙耶ちゃん」

「ん? 壱人君、なぁに?」

「いや……やっぱり、いいや」


無理だ。
やっぱり誘えねぇ。


沙耶ちゃんを何の戸惑いもなく“彼女”と呼ぶのに慣れてきた頃。

俺は重大なことに気が付いた。


いや、正確には気付かされた。そう言った方が正しいのかもしれないけど。


今更過ぎて誰に相談することも出来ないくらいに、本当に今更なんだけど。


実は。
沙耶ちゃんとデートしたことが、1度もない……。


旅行も行ったし、遊びにも行ったし。
出かける事は色々とあったんだけど。

ただ2人で。っていうのが1度もない。


しかも、それに気付いたのは天然の林で。

その林に言われて初めて気が付くなんて……何とも情けない話だ。


よくよく思い出せば。

確か沙耶ちゃんに誘われた事が2回位? あったように思う。

だけど生徒会の用事なんかが入ってて、断ったんだよな。


それ以来、沙耶ちゃんからも誘って来なかったから、俺も忘れてた……っていうのは言い訳で。

そんなこと、全く頭に浮かばなかったっていうか。


沙耶ちゃんは俺の妹、かおりの友達。

だから俺が誘わなくても家に2~3日に1回は来る。


それを当たり前だと思っていた俺は、今まで考えた事すらなかったんだよな。


< 1 / 23 >

この作品をシェア

pagetop