彼が即位したのは、クアルン暦六一〇年、大陸暦二〇〇二年――今から十年前のこと。

国土の三分の一が不毛地帯(アネクメネ)と呼ばれるこの国から、争いが絶えたことはない。

それも、数少ない水資源をめぐっての争いがほとんどだ。


大国とは名ばかり、正統な血筋などあってなきが如し。力のある者がこの国の王となる。

そんな中で、先代国王の息子サクルは即位した。


わずか十五歳の少年に、王位に就く資格のある者はもちろん、地方に住む有力部族や異民族、果ては近隣諸国の王族までもが同盟を破って反旗を翻す。


しかし、彼は一度も敗北を喫することはなかった。


とくに砂漠では圧倒的な強さを誇る。

水使いの巫女(ミヤーフ)を母に持つサクルは、砂漠の精霊(ラムル)までも味方につけ――即位から五年足らずで“砂漠の覇者”と呼ばれるほどになった。


最早、この半島に彼の敵はいない。

クアルン王国は有史以来、初めてといえる『安定の時代』を迎えつつあった。