リーンの知っている砂漠のテントは、柱が一本だけの小さなものばかりだった。

小規模の隊商しか見たことがないせいかもしれない。比較的大きなテントは、屋根だけ陽射し避けの布をかぶせられていた覚えがある。


リーンは四年前、大公一家と共に砂漠近くの町を訪れた。

そのころには元気だった母も一緒で、リーンに“砂漠の舟”の話をしてくれたことを思い出す。

母が倒れたのは森の宮殿に戻ってすぐのことだった。


『砂漠の精霊はとても優しいの。お母さんにオアシスの場所を教えてくれるのよ。でも、それがわかることは内緒にしておかないと。涸れ谷の魔物(ワーディ)に連れて行かれてしまうから』


砂漠を見られて幸せだった。大公への感謝の言葉を口にしながら、母は息を引き取った。


(オアシスの場所、わたしにもわかるかしら。もし、“砂漠の舟”に乗ることができたなら……)


半ば強引に決められた付き添いの侍女であったが、出自がわかるかもしれない、とリーンは自らを納得させついてきた。


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ファンタジー  身代わり    アラビア風  花嫁  身分差  偽り 

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