身代わり王女に花嫁教育、始めます!

(4)甘く淫らな果実

あれから数日が過ぎた。バスィールから使者が来た気配もなく、ホマーがどうなったのかもわからない。

リーンのそばに控えるのは侍女のシャーヒーンのみ。


そして、カリムが訪れるのは必ずといっていいほど夜。食事の作法といってはリーンをひざに抱き、食べ物を口まで運ばせる。

だが、寝室の作法を学んだ夜はなかった。


リーンの部屋の中央に食事用の絨毯が敷かれていた。

そして目の前に並ぶのは豪華な食べ物ばかり。とくに果物の種類が豊富だった。陸地からではなく、おそらく、海を渡って取り寄せたものがほとんどだろう。

この砂漠の地、それも国境近くまでよくぞ新鮮なまま運べたものだ、とリーンは感心していた。


(王命だから? それとも……)


リーンは彼のひざに座り、そっと間近にあるカリムの横顔を覗き見た。


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