夕闇の中、薪の灯りがぼんやりと能舞台を照らし出す。

やがて衣擦れの音とともに、太鼓を持った人たちが姿を現した。

どうやら『囃子方』と呼ばれる楽器専門の人たちらしい。

その中に尚哉の姿を見つけ、鈴菜は思わず息を飲んだ。

……黒い着物と袴に身を包んだ、端正な姿。

尚哉は舞台の奥の右端に優雅な所作で座り、笛を構えた。

やがてお囃子が始まり、舞台に独特の緊張感が流れ出す。


鈴菜はじっと舞台を見つめていた。

僧侶役の男性が出てきた後、やがて左奥の方から仮面をつけた女性がゆっくりと歩いてくる。

能なので演じているのはもちろん男性なのだが、その仕草や優美な雰囲気はまさに女性のものだ。

能は難しいというイメージがあったが、パンフで内容を押さえておけば舞台で何をやっているのかはなんとなくわかる。

この静謐で優艶な雰囲気は嫌いではない……というか、むしろ好きかもしれない。

と鈴菜が思った時。

尚哉が奏で始めた笛の音色に、鈴菜は息を飲んだ。


「……っ!?」



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