檸檬の変革
万華鏡
万華鏡は一度出来た形をもう一度見る事は
不可能に近い。

僕がそれを知ったのは、僕が大人になってからだ。

僕は小さい頃から病弱で入退院を繰り返し、学校に行った事が無い。
病院の中に教室みたいな部屋を作り身体の調子が良ければそこで勉強していた。

しかし、殆どの時間僕はベッドの上で過ごしていた。

病室の温度は常に一定で四季は窓の外の景色を見る事で確認していた。

つまり僕はかごの中の鳥と同じだ。

僕の病は誰かの身体を犠牲にしなければ生きられない身体。
移植しか治る見込みが無い。

ドナーから貰う命に僕は躊躇いがある。
だって人の命の犠牲でなければ生きられないなんて、自分が悪者みたいで、お預け喰らった犬みたい。

親はこの頃顔には出さないが、かなり焦っている所を見ると、僕はあまりいい状態では無いらしい。


別に僕はドナーが見つからなくても構わない、それが運命なら素直に受け入れる。
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