いつか、眠りにつく日

2、

「こんな話聞かせてごめんね」
身体全体で大きなため息をつくと、恭子はことさら元気な声でそう言った。

「ううん。つらい記憶を話させてこっちこそごめん」
未練をあえて解消しない決断は、相当な覚悟が必要なはず。自分にできるか、と自問することすら怖いと思う私は、まぎれもなく臆病だ。

「誰かに聞いてもらったのははじめて。だから、すごくうれしかった。蛍さんは、未練解消できそうなの?」

自分が悩んでいることなんて、恭子のそれに比べれば些細なことのように思えた。それを言うのも恥ずかしい。

「え?あ、うん。間もなくってとこ」

「そうなんだ。がんばってね」

 ああ、彼女のような強さが私にあれば。

 私にあれば。



 
 
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