いつか、眠りにつく日
「蛍」

 目を閉じて光を感じている私にクロが声をかけた。


「・・・連れていかれるんだね。あっちの世界に」
クロを見つめる。

 もう覚悟はできていた。

 心が落ち着いているのか、白い息も出ていない。
 
 さみしいけれど全部終わったんだ、という充実感もあるのが不思議。


「その前に、言わなくてはならないことがあるんだ」
そう言いながらクロが目線をそらす。

 私が黙ってクロを見つめていると、
「よく聞いてほしい。実は、お前に嘘をついていた」
とボソリと言った。

「嘘・・・?」

「ああ、嘘だ」


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