いつか、眠りにつく日

3、

 屋上には誰もいなかった。

 快晴の日差しが降り注ぐ中、たくさんのシーツが風を受けてはためいている。まるで海にたくさんのヨットが並んでいるみたいだ。

 手すりの方まで歩いてゆく老婦人に遅れまいとついてゆくが、思ったよりも彼女は足が速かった。

「ここまで来ればいいじゃろ」
手すりを背に、老婦人は向きを変えた。

「あの、どうして私が見えるんですか?」

「まあ、待ちなさいな」
彼女はポケットから煙草を取り出すと、火をつけて気持ち良さそうに白煙を宙に逃がした。
「あー、生き返るなぁ。あ、お前さんの前で言うのは失礼じゃな」

「・・・いいえ」

「しかし、この病院にあんたみたいな若い幽霊がいるとはな。名前は何て言うんだい?」








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