鏡台の前に座ったクルミは、鏡に映る自分の姿をぼんやり見つめた。
 亜麻色の長い髪は細く猫毛でふわふわしてあまり艶がない。
 母のように艶のある濃いブロンドならよかったのにと時々思う。

 大きな緑の瞳と丸顔のせいで少し幼く見える。
 見た目は普通の娘だろう。

 けれどあの夜ジンは言った。
 間違いなく極上の女だと。

 獣を引きつける甘い香りは、一種のフェロモンなのだろう。
 けれどそれが人間に作用する事はちっともないのだ。
 その証拠にクルミは人間の男性を引きつけた事は一度もない。

 人見知りで引っ込み思案のため、存在に気付いてもらえない事すらあった。

 まだ学校に通っていた頃、クルミには憧れた先輩がいた。
 帰りに突然雨が降った時、途中まで傘に入れてくれた事がある。

 家まで送ってくれると先輩は言ったが、途中で迎えに来た馬車に出会ったのだ。

 二人で一つの傘に入り、他愛のない話をしながら歩くのはとても楽しかった。
 もっとも、クルミはドキドキして、ほとんどまともに話す事はできなかったけれど。

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