薄暗い食料置き場の隅で、積み上げられた小麦粉の袋にもたれ、クルミはひざを抱えていた。

 しばらくジンに会いたくない。

 家庭教師は随分前に帰った。
 いつもは教師を見送った後、モモカがジンを呼びに行くのだが、今日は自分が呼びに行くからとウソをついて止めたのだ。

 リビングや自室にいれば、呼びに行かなくてもいずれは見つかってしまう。
かといって一人で庭に出るのは父に禁じられているし、なにより獣に出くわすのが怖い。

 クルミが部屋にいない事を知ったら、ジンは焦るだろうか。
 少しぐらい困ったらいい。
 それでモモカが叱られたら申し訳ないとは思う。
 思うが、あと少しだけ、ジンに会いたくない。

 理不尽な理由で勝手に怒って、彼はクルミを傷つけた。
 傷は治してくれたが、胸を触る必要はなかったと思う。

 思い出すたび、背中を突き抜けたあの感覚も蘇る。
 そしてそれが不快感とは違う事に戸惑っている。

 ドレスの着付けをモモカに手伝ってもらう時、何度か触られた事はあるが、あんな感覚はなかった。
 相手が男性だからだ。

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