ジンの唇がまぶたから頬へ、そして唇へと移動する。
 朝とは打って変わって優しいキスに流されそうになる。

 これ以上は無理。
 こんな風に流されていては、離れられなくなってしまう。

 クルミは意を決して、ジンの胸に手を添え身体を突き放した。


「私が嫌いなら、こんな風に優しくしないでください」


 そっと抱きしめられて涙をぬぐわれたら、慰められているようで虚しい期待をしてしまう。

 俯くクルミの頬に、ジンはそっと手を添えて顔を上向かせた。
 間近で見つめるジンの顔から眼鏡が消えている。

 冷たい光を湛えたまま、ゆっくりと目が細められ、口元に笑みが浮かんだ。
 徐々に鼓動が早くなる。
 胸の奥で警鐘が鳴り始めた。
 逃げろと本能が告げている。

 けれど手のひらの温もりが、見つめる瞳が、身体を縛り付けているかのように動く事ができない。

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