クランベールに行ってきます


 結衣が今まで言葉を交わした一番エライ人は、せいぜい取引先の社長が関の山だ。

「ど、どうしよう。王様に話すような敬語なんてわからないわよ。あなた何て言ってたっけ。おこがましい? そんな言葉、生まれて今まで使った事ないし……」

 頭をかかえて、うろたえる結衣を横目で見下ろして、ロイドは呆れたように嘆息した。

「ったく。変に敬語を使おうとするな。おまえのような庶民は丁寧語で充分だ。タメ口きかなきゃそれでいい」

 それを聞いて結衣は少しホッとした。
 国王ではなく取引先の社長だと思えばいい。

「奥の扉が閉じるまで黙ってろ」

 そう言ってロイドは歩くスピードを上げた。

< 16 / 199 >

この作品をシェア

pagetop