謁見の間の扉の前には誰もいない。
 だが、よく見ると扉の上部左右に監視カメラが取り付けてあった。

 二人が扉の前にたどり着くと、まるで自動ドアのように扉が内側に開いた。
 扉の内側に入ると、内側から人が開閉している事がわかった。
 監視カメラで誰が来たか確認しているのだろう。

 そこは十メートル四方の空間になっていた。
 今入ってきた手前の扉に二人、その正面にある奥の扉に二人、衛視が立っている。
 左手の壁には監視カメラの映像と思われるモニタが四つ埋め込まれていた。

 ロイドが用向きを伝えると、衛視が奥の扉を開いてくれた。
 二人が謁見の間に入ると扉は静かに閉ざされた。

 扉の奥には広大な白亜の空間が広がっていた。
 コンサートホールのように高い天井には煌びやかなガラスの装飾に彩られた巨大な照明が設置され、大理石の白い床と壁が部屋を明るく感じさせた。

 入口の扉からまっすぐに赤い絨毯が敷かれ、正面にしつらえられた階段の上の玉座まで続いていた。

 玉座には王が座っている。
 広い部屋の中には、王とロイドと結衣しかいない。

 事情が事情だけに人払いがされているのだろうが、突き詰めればロイドは王と一対一での謁見を許されている事になる。
 どういうわけで、この横柄なエロ学者がそこまで信頼されているのか、結衣には不思議でしょうがなかった。

 ロイドは玉座の階段の下まで絨毯の上を進むと、跪いて頭を下げた。
 慌てて結衣も跪く。


「陛下、レフォール殿下の影を連れて参りました」


 ロイドが恭しく告げると、王は声を上げて笑った。


「ロイド、顔を上げろ。おまえにそこまでへりくだられると、こそばゆい」


 ロイドは立ち上がると王を見つめて少し笑った。
 結衣も続いて立ち上がる。

 王は穏やかに微笑むと結衣に視線を移した。
 結衣は恐る恐る王の顔を見つめる。

 さすがに兄弟だけあって、先ほど出会ったラフィット殿下とよく似ている。
 ラフィット殿下からひげを剃って髪を心持ち長くしたような感じだ。
 だが、その瞳は遙かに威厳に満ちていた。

 自分とはあまり似ていない。
 ということは、王子は母親似なのだろう。