クランベールに行ってきます
突然、後ろからロイドが両肩を掴み、耳元で囁いた。
「オレをからかうとは、いい度胸だ」
肩に乗ったロイドの手の重みに、意思に反して身体が怯える。
震えるな! 感付かれる!
小刻みに震えそうになる身体に必死で言い聞かせていると、ロイドが肩から手を離し、頭をひと撫でした。
「悪かったな」
感付かれた?
恐る恐る振り返ると、ロイドは手すりにもたれて空を見上げていた。
「これでも責任は感じているんだ。うちの子が迷惑をかけて」
うちの子って、人捜しマシンの事だろうか。
どうやら感付かれてないらしい。
ホッとした途端、全身から力が抜けそうになり、結衣は手すりにしがみついた。
ロイドは星空から視線を戻すと、自信に満ちた瞳で結衣を見据えた。
「今はまだ見当も付かないが、必ずおまえをニッポンに帰してやるからな。オレのプライドにかけて」
「うん……」
結衣が抑揚のない声で返事をすると、ロイドはポケットから何かを取り出して結衣に差し出した。
差し出された手の平には黄色い小鳥が乗っていた。
だが、ピクリとも動かない。
ポケットから無造作に取り出したところを見るとロボットなのだろうか。
結衣がぼんやり眺めていると、ロイドは小鳥の腹部を探りスイッチを押した。
途端に小鳥は目を開き、何度か首を傾げた後、軽く羽を震わせて結衣の肩に飛び移った。
「おまえにやろう。エサはスキンシップだ」
「スキンシップ?」
「足の裏に熱センサが付いている。熱エネルギーを動力に変換して内臓バッテリに蓄積し、動く仕組みになっている。動いている時にバッテリが切れかかると、手や頭に乗りたがる。うっとうしいと思うならマメに手の平に乗せてやってくれ。まぁ、腹にある電源を切るという手もあるけどな。おまえ、鳥は平気か?」
「うん。好き」
肩に留まった小鳥をチラリと見て答えると、ロイドが少年のように嬉しそうな笑顔を見せた。
「そうか。昔、殿下に昆虫のロボットを差し上げた事があるんだが、女には虫より小動物がいいかと思って」
”うちの子”が迷惑かけたからお詫びなんだろうか?
”我が子”が気に入られた事に気をよくして、ロイドはさらに小鳥ロボットの特徴を教えてくれた。