日の光の下で見る初めての風景に、結衣は圧倒されて見入った。
 クランベール王国の首都ラフルールは大陸の南西に位置し、王宮は小高い丘の上に建っている。
 結衣のいる王宮のテラスからはラフルールを一望し、西と南に広がる海と東に連なる山脈を見渡せた。

 ロイドの作ったマシンから察するに、クランベールの科学技術の水準は、地球のそれを上回るものと推測される。だが、眼下に広がるラフルールの街並みは中世ヨーロッパの片田舎のようだ。
 高い建物は一切なく、ほとんどの道路は狭い。広めの道路にも自動車は走っていない。走っている乗り物は馬車か自転車で人々は徒歩で行き交っていた。
 当然のごとく線路もないので列車も走っていない。ラフルールから延びる人の歩いていない石畳の白い道が、街の外の大平原や点在する森の中へ続いていた。その道以外、街の外には何もない。手付かずの雄大な大自然が広がるだけだった。

 遠くに見える海の港に船が何隻か停泊している。船は普通にあるようだ。
 一番目を惹いたのは、時々空を飛ぶ大きな乗り物だ。
 飛行船に自在に動く羽を付けたようなこの乗り物は、飛行場と思われる場所から時々垂直に離着陸している。
 地球のジェット飛行機のように轟音を響かせて早く飛んだりはしない。低いうなりを上げて空をゆっくりと進む姿は、のどかなクランベールの風景に溶け込んでいた。

 王宮の真上を飛ぶのは禁止されているようで、少し離れた空を通り過ぎる見た事もない乗り物に見とれていると、部屋の中から電話の呼び出し音が聞こえた。
 結衣は慌てて部屋に駆け込むと電話の応答ボタンを押した。小さな液晶画面に不機嫌そうなロイドの顔が映し出される。

「何をやってる。後で来いと言っただろう。さっさと来い。いつまで待たせる気だ」

 すこぶる機嫌が悪い。

「……ごめん、すぐ行く」

 そう言って電話を切ると結衣は大きくため息をついた。”後で来い”とは言われたが、”すぐに来い”とは言われてないような気がする。
 結衣はソファの背もたれに留まった黄色い小鳥に向かって手を差し出した。

「ロイド、おいで」

 小鳥はピッと一声鳴いて羽ばたくと、差し出した結衣の手に留まった。
 やって来た小鳥を肩に乗せて、結衣は足早に部屋を出た。