砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
一の五
もお、やだ。
 どうなってんの、この屋敷!!



 唇づけに応じるふりで相手の力を抜かせ、ぎりぎりで雅之から逃げ出した毬は部屋を飛び出して、助けを求めた。

 が、何故か皆、楓と同じように真っ青になって倒れているのだ。

 毬は髪が乱れるのも、着物が乱れることも気にせず、一心不乱に屋敷中を走った。


 気が付いたら、暗い土倉の扉を開けていた。

「……どうして、そんなに逃げるの?
 あんなに愛されたら嬉しいんじゃないの?」

 唐突に、淋しげな女の声が聞こえて身体が跳ねる。
 
 土倉の中に、顔色の悪い女がいた。
 薄桜色の着物を身にまとっている。
 髪型とその着物から判断して、おそらくは、女房だ。



 しかし、毬はこの女に見覚えは、ない。
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