銀棺の一角獣
国王の前にて
 旅の間ルドヴィクは、アルティナには近寄ろうとはしなかった。けれど毎夜、アルティナが宿泊場所から外を眺めると、そこに彼の姿を見ることができた。

 二人は視線だけで会話をかわす。


『どうか、ごゆっくりお休みください――』

『あなたも――』


 ここは周囲の人たちが二人を温かく見守ってくれた宮中ではない。

 アルティナに恋人がいるなどとライオールにつけこませる隙を与えるわけにはいかなかった。

 だから、日中も二人は極力距離をあけたまま旅を続けていた。

 それが変わったのは、明日にはライオール王と対面するという前夜のことだった。

 夜着に着替えたアルティナは、今までそうしてきたようにテラスへと出た。そこに膝をついている影に踏み出しかけた足が止まる。
< 20 / 381 >

この作品をシェア

pagetop