銀棺の一角獣
「わたしは……罪を犯そうとしているの」

 冷たい金属製の鎧に額を押しつけて、アルティナは言った。

「国を守ってくれる――その存在を敵に売り渡して――それと引き替えにつかの間の平和を得ようとしているの……きっと地獄に堕ちるのね」


 額を押しつけている冷たい金属と、優しく包み込む腕の感触が、かろうじてアルティナの意識をつなぎ止めている。

 ――側にいてほしいなどと言うべきではないのだ。きっと彼に過酷な運命を背負わせることになる。


「……アルティナ様」


 低い声でルドヴィクが彼女の名を呼んだ。


「あなたが正しいと思うことをなさってください。あなたが地獄に堕ちるその時も、けして一人にはしませんから」


 互いの鼓動が感じられるほど近くにいるのに、どちらもそれ以上動こうとはしなかった。


「――お部屋に、お戻りになってください。夜風は体に毒です」


 彼女を拘束するルドヴィクの腕が少しゆるむ。


「そう……そう、ね。部屋に……戻るわ」


 アルティナは、ルドヴィクの腕から身体をほどいた。



 ――罪の意識に震えながら。
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