夢の外へ

「それが結婚じゃない?」

「はーい…って、明日香?」

ドアを開けた杏樹が驚いている。

「お邪魔します」

「えっ?

ちょっと…」

ズカズカと家の中へ入って行った私に、杏樹が追いかけてくる。

「片桐さん、今日もお仕事なんでしょ?

だったらいいじゃない」

杏樹の方を向かずに私は言った。

さすが旦那さんは医者だ。

家は高層マンションで部屋は広い。

「明日香待って、何があったの?」

杏樹が私に追いついて、とおせんぼをする。

「いきなりきたからビックリしちゃった。

一体何があったの?」

「別に…」

答えたくなくて、私は杏樹から目をそらした。
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