プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ

(5)オトナの恋愛事情

 出張先へは羽田空港から飛行機で向かう。列車があまり好きではないという市ヶ谷副社長のデータを引き継いでメモに目を留めた。

 コーヒーや炭酸は好まない。タバコは吸わない。お酒はワインのみ。特に赤が好き。

 暖色系のネクタイの色が好きで……それから、女性には優しいフェミニスト。潤哉さんよりも三歳上。いまだ――独身。

「先方がわざわざ迎えに来てくれるって?」
「ええ。伊丹空港で待っていて下さるそうです」

「プライマリーも大きくなってきたもんだな。ずっと昔はどうあがいて外資系の趣味は国内にそぐわないっていうんで売り場争いもなかなか難しかったが。リッテルとうまくやれている部分が大きかったんだろう。黒河社長の手腕には頭が下がる想いだよ。僕はこの一年半の間、期待に押しつぶされそうでたまらなかった」

 シリアスな話も市ヶ谷副社長が言うと、ほんの少しジョーク混じりに感じるのは人柄だろうか。

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