プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ

(7)誰かが誰かを愛してる

「京都にご実家があるんですか?」

 学生時代過ごした……ということや経歴等などをはじめ、森重室長からもらっていたけれど、そこは空白のままだった。

 案内されたのはホテルではなくて、市ヶ谷副社長の実家で旅館だった。

 内心ホッとしていたのを気付かれないように、彼を見上げると懐かしそうに目を細めていた。

 両親は既に他界されているようだけれど、妹夫婦が経営しているとのこと。なんだか花村の事情と似ていて、親近感を抱く。

「ああ。そういえば、君の実家も箱根湯本で旅館を営んでいるんだったね」
「はい」

「こういう機会がなければ訪れることもなかった。懐かしいよ」

 真相を訊いて心からホッとすると、市ヶ谷副社長はまた笑った。

「ホテルに泊まるよりも安全だろ?」
「……」
 イエスともノーとも言えないで、私は苦笑いをするだけ。

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