美羽の様子がおかしい。

 僕は後ろから抱きしめながら、彼女が何か後ろめたいのを隠すようにしているように感じた。

 ――今週初めのことを振り返る。

「美羽、今週末、シェイクスピアのロンドン公演に行かないか? 日本人が演じるみたいだよ」

「舞台、面白そうですね」
「ああ、土曜日なんだけど、その後……」

 僕がデートプランを喋ろうとすると、美羽は僕の方を振り返って、あっと口元に手をあてがった。

 おもむろに手帳を開いて辿りながら「やっぱり予定があったわ」と言う。

「ごめんなさい。その日は、ミシェルと一緒に出かけるの」

 シュンとした上目遣いはわざとじゃないことぐらい分かる。
 だが、僕にとっては反則でしかない。ダメだと引き留められないじゃないか。

 美羽には自然と人が集まってくる。彼女のやわらかな笑顔や人柄に惹かれるのだろう。

 このところ、彼女を独り占めするというわけにはいかないらしい。

 毎日神経質だったセクレタリールームのミシェルですら、今は彼女の良き上司で親しい友人だ。

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