プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「まだ顔が赤いよ。もっと要る?」
 煽るように言ったのがバレて、美羽に叱られる。

「そういう介抱の仕方なら、要らない」
 すっかり拗ねてしまったようで、おかしくて笑うと、彼女からの逆襲がやってきた。

「分かった。明日からウィルに私を盗られるから、離そうとしないんでしょ?」

 時々的を射たことを言うので、僕は知らないフリをする。子供のようなのはどっちなんだか。

 ただ、猫とじゃれ合っている美羽を見るのも、確かに悪くないと思い直すが。

「猫か。犬なら散歩のしがいがあるけどね、どうするつもりで?」
「うーん、食事のあげ方とか遊び方はミシェルのメモにあったの。何かあれば国際電話でもいいって……」

「任せっきりだな。彼女らしくない。相当熱をあげているようだね」

「それは会社の時の顔と違いますよ。潤哉さんだってそう。仕事している時の顔と、家とじゃ大違い」

「そうかな。そうでないとマズイけどね」
「……どっちも、好きですけど」

 美羽はおずおずと言ってシーツの中に潜り込もうとする。タオルで乾かしてやりながらドライヤーをあてがっているというのにシーツが濡れてしまっていた。

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