天使の舞―前編―【完】
広い王宮の廊下を、面倒くさそうに、キャスパトレイユは歩いていた。


窓から差し込む目映い光が、キャスパトレイユのミルクティー色の緩い天然パーマを照らす。


「はぁ…。面倒くせぇ。」


父であるこの国の王ウェルザに呼ばれ、キャスパトレイユは王の間に向かう途中であった。


愛らしい面立ちに、いたずらっ子のような雰囲気をまとった青年キャスパトレイユは、必然的に王子という事になる。


ふいに足を止めると、キャスパトレイユは、眩しい程の陽射しを手で遮って、背中の白い大きな翼をパタパタと羽ばたかせた。


背中に、白い翼を持っているこの王子。


何を隠そう彼は、天使である。


そう・・・ここは天使の国、天界。


その天界を統治する中枢である、天王宮の廊下で、王子キャスパトレイユは、重い足どりを止めていた。


またもキャスパトレイユは、ため息をつく。


「はぁ…。面倒くせぇ。」


上を向いて大きく息を吐き出すと、再びキャスは重い足取りで、歩き始めた。
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