天使の舞―前編―【完】
忘れてたと言わんばかりに、キャスパトレイユが言い出そうとした時、乃莉子が制した。


「あ…あの。
改めて名付けさせて下さい。
私あの時は、そういう自覚なかったから…。
悠くん。
あなたは“はるか”ではなく、今から“キャスパトレイユ”です。」


しっかりとキャスパトレイユの目を見て、宣言した乃莉子。


「乃莉子…!」


嬉しそうにニッと笑って、キャスパトレイユは乃莉子を抱きしめた。


「あなた達も、これから大変になりそうね。
特に乃莉子。
くじけずに、キャスパトレイユを愛してあげて下さいね。
あなたに、一日も早く白き翼が舞い降りん事を、祈っておりますわ。」


「どういう意味だよ!」


キャスパトレイユは、シンシアに食って掛かった。


「・・・ライラでしょ・・・トルティナでしょ・・・アーナスも・・・だったかしら。
ふふっ、恋多き罪な王子さまを、今か今かとお待ちかねだったわよ。
自分で撒いた種だもの、バレるなら早い方がいいと思うの。」


人差し指をあごにあてて、とぼけた顔でキャスパトレイユに言い放ったシンシア。


「・・・!忘れてた・・・!」


そう叫ぶとキャスパトレイユは、蒼白な顔になり、頭をかかえてしゃがみこんでしまったのだった。


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