天使の舞―前編―【完】

  お前の笑顔があればいい

乃莉子は、緊張から解き放たれた事もあってか、全身の力が抜けていた。


部屋全体が明るい木洩れ日で溢れているのだが、乃莉子の今の心境とはまるで正反対だ。


乃莉子は、脱力感でいっぱいだった。


謁見の間から場所を移して、乃莉子は今、早急に用意してもらった、客間のベットに横たわっている。


キャスパトレイユはしつこく、一緒に自分の部屋に来るようにと粘ったのだが、乃莉子が最後まで首を縦に振る事はなかった。


王妃シンシアがキャスパトレイユに羅列した、女性達の名前が乃莉子を拒ませた理由である。


キャスパトレイユは、言い訳をしたかったようなのだが、乃莉子に、聞く耳はなかった。


この数日の間におこった出来事が、あまりにも目まぐるしくて、乃莉子の思考回路はフル回転中だったのだ。


それなのに、追い討ちをかけられるように、聞かされた暴露話で、乃莉子の頭は爆発寸前。


とてもまだ、この先おこるであろう問題と、向き合う気にはなれなかった。


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