天使の舞―前編―【完】
アカツキの悪企みに、アマネはしばらく考える素振りを見せる。


「父上。
いささかその計画は、無謀ではありませんか?」


今まで、魔王に逆らった事などなかったアマネ。


だが咄嗟に、この言葉が出てしまった。


「何だ?
私に意見する気か?」


「あ・・・。いえ・・・。そんな。」


「ならば、従え。」


一蹴に伏されて、アマネは頭を垂れた。


どこまでも威圧的な父の命令に、アマネは抗う事など、できはしないのだ。


「では時期をみて、人間界に向かいます。」


毅然と魔王に答えて、アマネは王の間から立ち去る。


心に秘めたアマネの本心は、誰にも語られる事はなく、ただ、覇王になるという使命だけが、アマネを縛っていた。


アマネには、まさかキャスパトレイユが、覇権を欲していないだなんて、知るよしもなかった。


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