何も知らないふり、

何も見ないふり。


わたしは何もわからない。


幼い私はそれを理由にして、知ることから目を背けた。


優しく笑ってくれていた母の顔が、怯えと恐怖に染まり、

寡黙だったけれどなんでも包み込んでくれるような、

そんな温和な父の顔が理性を失ったのを見たとき、


一瞬で自分を呪った。


弱いわたしでごめんなさい。

甘えて、現実から目を背けてごめんなさい。


『恨むのなら両親を恨めよ』

そう言ったあの人の言葉が、忘れられない。


『わたしが悪いから』と言えなかった、


私はやはり、弱くて醜い。







「……連れていって…って……?」


ルトが眉を寄せて、目の前の少女を見つめる。

桃色の美しい髪を横にひとつで結び、上品な純白の召しものに身を包む彼女は、貴族令嬢そのもので。

彼女は唇を噛みしめて、声を震わせた。


「…そのままの意味です。私をこのディアフィーネから…私を知る人間が誰もいないところへ、連れていって欲しいのです」


その言葉に、ルトと私は益々眉を寄せた。



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