月夜の翡翠と貴方


…暗闇のなかに、茶色が見える。


…嘘。

うそ。うそ。

どうして。


「女ぁ!」

後ろで、男の声がする。

私の手を、何かが掴んだ。

「…!」

…嘘でしょう。

だって。

だって。

瞳に、涙がにじむ。

『私達』は走り出す。


…それは、もう昨日から、焦がれていて。

冷たい右手を、暖めてくれる。


…愛おしい人の、手だった。

















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