遊びじゃない
それはナイでしょ 


いくら3月の中旬といってもまだまだ桜も蕾のままで。トレンチコートの襟を立てて、もうすっかり暗くなった会社のエントランスを見つめる。

もう何度確認したかわからない左腕のカルティエに視線をうつすけど、さっきから5分も経ってない。

「ったく、いつまで仕事するのよ。」

あれからすぐにゆうを捕まえようとしたけれど、あいにくの出張で今日まで捕獲できておらず。

さすがにホワイトデー前の金曜日だけあって、腕を組んだカップルがやたらと目に留まる。

私の腹時計も限界を告げているし、もういい加減足先の感覚もわからなくなってきた。

会社横の植え込みの影。

別にこんなとこで待ってなくてもよかったのかもしれないけど、ロビーで待ってたりして万が一の確率で麻生さんにでも会ってしまったら最悪だから。

あとは、彼女でもない私がゆうの仕事中に待ってるメール送るのも違うかんじがして。

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