キウイの朝オレンジの夜


 営業鞄を引っつかんで支部を飛び出す。

 まだ雪が降る中を、濡れた地面の上をヒールで走った。

 今日は電車で来ていたので、あたしは駅までダッシュする。ムカついていて、情けなくて、悔しくて、よく判らない状態になっていた。

 涙は出てない。だけど駅の構内の鏡にうつったあたしは、相当酷い顔をしていた。

 青ざめて、目じりは上がり、荒れた唇で。

「・・・本当に、もう!」

 天に唾を吐きかけてやりたいが、そんなことを実行すれば間違いなくその唾はあたしに落ちてくる。

 ダメダメ、止めておこう。でもこんな気分じゃ家に帰って母親に微笑んだり出来ない。かと言って、まだ泣きたいわけでもない。というか、今の自分の状態が実はよく判ってない。

 泣きたいのか、怒りたいのか、それとも笑いたいのか。

 うーん・・・としばらくホームで立ち尽くす。

 そして、決めた。入ったばかりの改札をまた出て、馴染みの居酒屋に足を向ける。

 今日は、自棄酒だ。気が済むまで一人で飲んでやる!



< 48 / 241 >

この作品をシェア

pagetop