変わった同居人


「――ということらしいので散歩は私とタマで行くことになりました。」




「そうか。」




夜21時。
淡島さんが気にしていたと思ったので、一応報告。


返事は淡白だが、少し口元が緩んだのを私は知っている。


樫木、とことん嫌われてるよ。




「この魚、美味い。」




さっきまで全然食が進んでいなかったのに…淡島さんもかなり分かりやすい人だ。




「嬉しそうですね、淡島さん。」




「ゴホッ……」




お茶を飲んでむせていた。


少し耳が赤い。


言い当てられて照れたのだろうか。


普段は仏頂面でたまに笑っても微笑程度。


淡島さんなりに充分笑っているつもりでも端から見れば笑えていない。


だけど淡島さん程分かりやすい人は居ないと思う。


最初は難しそうな人だと思ったけれど、実際話してみるとただ優しい不器用な人だった。
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