ハッピークライシス
AT 25:00




ロマンチックなど欠片もない。
閉じた瞼に口付けが落とされ、その冷たい温度に身震いした。


「…なあ、シホ」


気に入りの、丈の短い真っ赤なサテンのドレス。
男はその美麗な顔にニコリと笑みを貼り付けたまま、無遠慮に裾下から手を突っ込んで邪魔だと言わんばかりに下着を剥ぎ取った。


「あんたがその顔する時って、大抵碌なこと考えてないわよね」


そのピアニストのような指で身体を弄ばれる度、ぞくぞくと粟立つ肌。
互いが持て余す熱を熱で溶かすだけの行為に耽るのは、これが初めてではない。

手馴れた動作でシホ=ハーシェルの腰を抱き、緩慢な動作で突き上げる度に、発情期の猫みたいな声がシホの唇から飛び出す。波打つ胸の奥が興奮に疼く。引いては押し寄せる甘ったるい感覚に思考はどんどんと鈍くなる。

< 1 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop