雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「甘そうだな」(3)

 また「エロ学者」と罵りながら殴りかかってくるかと思ったら、案外上手い切り返しだ。

 やはりユイの反応は、予想外でおもしろい。
 思わず笑いが漏れる。

 そして昼間に湧いた、好奇心が頭をもたげた。

 テラスの淡い灯りに照らされて、ユイの唇が一層なまめかしさを増している。

 ユイの唇を味わってみたい。

 抗いがたい欲求に、上手い口実を思い付いた。


「じゃあ、根に持たれたら困るし、忘れる前に帳消しにしとくか」


 そうつぶやいてロイドは、メガネを外し胸ポケットに収めた。
 ユイの正面に立ち淡く微笑みながら、呆然と見上げる彼女の唇を見つめる。

 ユイがハッとしたように問いかけた。


「メガネなくて見えるの?」
「近付けば問題ない」

< 43 / 374 >

この作品をシェア

pagetop