自室の居間で寛いでいたエレナのもとに、乳母が満面の笑みを浮かべて近付いて来た。
随分と機嫌が良さそうだ。

「姫様、本日の夜会には神官長もいらっしゃるそうです」

「お父様が? 珍しいわね、お父様は賑やかな場がお嫌いなのに」

「きっと姫様の様子を見に来るのでしょう。今夜は王太子妃としての役割をしっかり務めているところを見せなくては!」

乳母は張り切って言うと、支度が有ると言いふくよかな体を揺らしながら去って行った。
その背中が見えなくなると、エレナは近くに控えていたフィーアに声をかけた。

「お父様がわざわざ私に会う為に夜会に出ると思う?」

「思いません」

悩む様子もなく、あっさりと否定される。

「そうよね」

決して仲の良い親子ではなかった。

幼い頃から神殿に居る事の多かった父とは顔を合わす事も少なくて、三月会わない事も珍しくはなかった。

そんな父が嫁いだエレナの様子を見る為に夜会に来るとは思えない。

「おそらく国王やアレス様に用が有るのでしょう」

「アレス様に?何の用で?」

「分かりません。でもアレス様の妃として気は遣わないと。神官長は王に次ぐ権力者ですから」

「そうね、分かったわ」

父を接待するなんておかしな気もするけれど、アレスの役に立てるなら何でもするつもりでいるのだから。

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