ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「よかった。奇跡だ。ちゃんとお金入ってた。

とりあえずこれだけあれば足りる?

あ、交通カードもあるよ。これ使う?

……あ、ダメだ、残額80円しかないや」


がっかりしたようにそう言うと。


「……あ、そうだ、いいものがあるんだった。座ってて」


急に勢い良く立ち上がって、どこからか箱を持って戻ってくる。


「A出版社の人からもらったんだけど、こういうの好き?

良かったら、食べる?」


色とりどりのお菓子の詰め合わせを笑顔で差し出す。


(って、お茶淹れるって言ってなかった?

いちいち無秩序なんだから……)


ちょっと笑ってしまいながら、その屈託のない明るい笑顔を見ていると。


(この人に、絵を教わりたい……)


そんな衝動が心の底から不意に突きあがって。

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