ポイズン
あげはの目が伏せる。

それからコクリと、小さくうなずいた。

「初めてあなたを見た時、驚きました。

正宗様――わたしが心の底から愛した人、まさにその人だった」

あげはの目が俺を見る。

「少しだけ、昔の話をしてもいいですか?

大正時代、正宗様が生きていた頃の話を。

長くなってしまうかも知れないけど」

「何時間でも聞く」

俺が言うと、あげはは深呼吸をした。

小さな、血色のいい唇が動いた。
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