泣き顔の白猫

最後の証人



「やっぱりこの時間か」

検死結果を見ながら呟いた安本の言葉は、加原の心の中を代弁したみたいだった。
ただし加原のそれを口に出したなら、『頼むから別の時間であってほしい』という思いを裏切られての、溜め息混じりの絶望が滲み出たものだったに違いない。

松前佳奈子の死亡推定時刻は、“二十三歳の連続不審死”――もとい、“館商高校同級生連続殺害事件”の被害者四人のそれと、類似していた。

十二時半から一時半の間。
つまり一時前後というのが、この一連の連続殺害事件すべてに共通する、犯行時刻だ。

他に共通点は、同級生であること、そして、五年前に起きた男子高校生殺害事件の関係者であること。


そして松前佳奈子が死んでしまった今、残る関係者は、その事件の犯人として逮捕された、名波――平河名波ただ一人になっていた。

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