ベイビー&ベイビー
第4話
第4話
「全く、爺さんはそろそろ引退してくれてもいいのに」
思わず先ほどまでのやり取りを思い出し、大きくため息を零した。
あまりにしつこい爺さんの応戦をなんとか切り抜けて、俺はパーティー会場から抜け出すとロビーにおいてあるソファーに身を預けた。
あの勢いだと、まだ諦めてはいないだろう。
これから毎日この応戦が続くかもしれない、と考えただけで疲れが出てくる。
あの九重代議士は、本当にしつこいのだ。
口は達者だし、しつこいし、粘るし。自分の信念は絶対に曲げないし。
政治家になるべくしてなった、そんな大物政治家だ。
もうすぐ70歳になろうとしている九重。
まだ引退は考えていないらしい。あれだけ矍鑠としてれば、そんじょそこらの口だけ政治家よりは社会の役にたつだろうが。
外交が得意で、あの年の老人だとは思えないほど語学が達者だし、海外のいろんなトップとのパイプがいくつもあるらしい。
政治家としては、なかなかに力も行動力もあるとは思う。
しかし、その力はすべて世のため、国民のためだけに使っていてほしいものだ。
明日から見合い写真が山に送られて来そうだ。
それを想像しただけでも、ため息を零したくなる。
「お前は年の割りに、若くみえるからな。女性の年齢の幅も広がっていいぞ」
そういって下品に笑う九重を思い出した。
本当に全く。昔からおせっかいなんだ、あの爺さんは。
悪い人ではない。
だが、あの強引さには本当に困ったものだ。