恋なんてミステリアス
第三章 千夏の思惑
「誰か来たのか?」と聞かれ、私は真理恵が来たと答えた。「真理恵とは?」と聞かれると、昔からの親友と返事した。 

 彼は私の交友関係に興味が無いらしく、男友達の話を持ち出してもこれといった目立った反応は見せたことが無い。これをク―ルと呼べば聞こえは良いが、裏を返せば私にそれ程の関心が無いのではとも思える。しかし、これまで争いごとの一つも無いのは、この関係の温さが私達には丁度良いのだろうと勝手に解釈してるのは私だけだろうか。 
「その真理恵がね、どうやら傷心の中にいるみたいなの。ここのところ彼氏の話もしなくなったから、今日、勢い余って聞いちゃった。そしたらね、黙り込んじゃって。それって、別れましたって事じゃない。誰にだって分かるよね。で、どうしたら真理恵が元気になるのかを相談したかったって訳よ」
 鮫島晃太は理解出来ない表情をした。 
「どうして俺が考えなくちゃいけないんだよ。顔も知らない人を元気にしろって言われても、そんな事が出来る訳無いじゃない」 
 あんた、少しは興味ってものを見せなさいよ。とは、さすがに言いはしないが、やっぱりあんたは温い男。 
「別に貴方が直接元気にする必要は無いんだよ。それは分かるよね?で、例えば、貴方と私は無関係の立場にあるとして、貴方の目の前で私が傷心してるとする。さあ、それを見た貴方はどうするでしょう?」
「ん?別に何もしないよ」「どうして?」
「面倒臭いだけだから」
「あ―、そうですか」
 やっぱり聞かなきゃ良かった。 
「でもね・・・」
「何よ?」
「向こうから話し掛けてきたら相手するかな、一応は」
 千夏は、確かにそれはそうだと思った。女性から話し掛けられて、そうそう無視する男は少ないだろう。そうなると、真理恵が好みそうな相手を見つけることが先決だな。
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