牙龍−元姫−

見慣れた光景












「戒吏さまああ!」

「きゃああ!」

「こっち向いてえ!」

「おはようございまああす!」

「メアド教えて下さい!」

「私もっ!」




名門"神楽坂高校"


名高い神楽坂は生徒数も多いため朝の登校風景は決まって華やか―――――いや、騒がしい。


きゃあきゃあと女子達は手を取り合い興奮気味な様子。とある集団に視界にいれると黄色い声を上げるのが日常化して来ている。


その"とある集団"は芸能人でも何でもない。ただの頭の色がカラフルな不良軍団だ。


本当にただの不良集団だ。ただの一介の不良なのだが、芸能人顔負けの美形男子ばかり。


"牙龍"を名乗る彼らは知名度が高い。彼らを一目見るためにこの高校に入学したものも少なくない。




しかし。


彼らの隣を歩く女子生徒が目に止まると、女子はここぞとばかりに声をあげる。その声は歓声ではなく罵倒。あちらこちらから罵倒の声が朝の神楽坂に響き渡る。






「なによあの女!」

「引っ込めブスッ!」

「地味女が調子乗ってんじゃないわよ!」

「生意気!」




彼ら"牙龍"という暴走族には、

とある女の子がいた。




その女の子は今時おさげに眼鏡というお世辞にも可愛いとは言えないダサい子だった。良い意味でも悪い意味でも目立つ模範生。
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