獣は禁断の果実を蝕むのか。

私は、犯罪を犯してしまったのだから。


事の発端は、同窓会で再会した友達に誘われたことだった。


取柄もこれといってないし。


ビジュアルだって、可もなく不可もなく。


そんな私が女子会と名付けられた3次会で連れて行かれたのは、きらびやかなネオン街のホストクラブだった。


初めてのきらびやかな世界に、ノリノリの同級生とは違って。


ガチガチに固まって、右往左往するだけだった私に


「初めまして。緊張してる?」


優しくほほ笑みながら目の前に来たのは、常務にどこか似た『祐爾(ゆに)』と名乗ったホストだった。


優しい微笑みだけじゃなくて、どこか常務に似ている彼に。


親近感も湧いて、少しだけ緊張がほぐれて。


「あ…はい。」


小さくうなずいた。

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