愛するということ
その時、『中川君』の力が少し緩められた。



――今しかない


私は、今ある力を振り絞って、『中川君』の胸を押しのけた。
私と、『中川君』の間に隙間ができた。



必死で逃げようとしたけれど、私の右手は『中川君』に掴まれてしまった。



「どうして、逃げるの。」



その声に、私はビクッと震えた。

『中川君』の声は、さっきまでの大声とは違い、静かで冷たく低い声だった。




さっきまで感じていた暑さがどこへいってしまったのか、私の体はガタガタ震えだした。


「俺のこと、そんなに怖い?」



やっぱり、さっきと同じ冷たい声に、私はもうどう反応することもできない。

すると、『中川君』は、「俺のことしか、考えられないようにしてやるよ」そう言って、私をベットに投げた。


突然ベットに投げられた私は、何が起こって、自分の体制がどんな状況なのか、理解するのに少し時間がかかった。
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