愛するということ
瞬を失ってしまうんじゃないかという不安と、このまま瞬に誤解されたまま、時間が過ぎることへの嫌悪感と――



自分でも分からないモヤモヤした気持ちが、周りを見渡す余裕なんて作ってくれなかった。







しばらくすると、拓馬が病室へやってきた。俺たちは久しぶりに兄弟4人が集まったからか、珍しく長い時間話し込んだ。

途中、何度か看護師に「意識が戻られたばかりなんですから、ほどほどに」と注意されたが、誰からともなくまた話し始め、止まることはなかった。




その間、瞬もずっと楽しそうに話を聞いていたし、途中自分から話題を振ってくることもあった。


全員が、4人揃ってくだらない話ができる幸せを実感していた。



でも、どこか会話の中にタブーな部分があって――
きっと、事故のコトをなるべく触れないように、

母さんのコトを触れないように・・・という気持ちは全員が持っていた。






瞬の意識が回復したから全て解決。とまではいかない複雑な夜は、過ぎて行った。

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