tearless【連載中】
戸惑い
結局体育をサボった私達は、あのまま教室で先生に見つからない様に息を潜めていた。

結衣はもちろん化粧直しに勤しんでたけどね。



『葵ッ、じゃあ私先行くから』

「拓磨くんによろしく」



数時間前に泣いていたとは思えない程、キラキラとした笑顔で教室を出て行く結衣。

“彼氏か…”そんな事を思いながら帰り支度をすると、ふと窓から下を眺めた私の目に飛び込んできたのは真那斗の笑顔。

後ろから走ってきた女の人が腕を絡ませると、そのまま校門の外へと消えていった。



胸元に見えたブルーのリボン。



「3年生……」



再び襲ってきた胸の痛み。

ちょっと前までは私に向けられていた笑顔なのに、今はあの3年生に向けられている。

“ストン”と力無くイスに腰を下ろすと、脳裏に焼き付いた光景にギュッと目をつぶった。



ダークブラウンのストレートの髪に、スラッと伸びた手足。

すごい可愛い感じの人だった気がする。



「…最近こんなんばっか……」



何度胸が締め付けられただろう…?



ゆっくり空を見上げると、灰色の雲が太陽を覆い被そうとしていた。



「…雨…降るのかな?」



ポツリ呟き、溜息をついた私。


 
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