エレーナ再びそれぞれの想い
 次の日、
「エレーナさん、昨日は心配かけて御免なさい。
あのう、それからいろいろ考えたんですけど、僕は慎一さんみたいになりたいと思います。
エレーナさんの前の契約者に負けないような立派な契約者を目指します」
「シュウ君……」
自分が死んだことにも気づかず、前向きに頑張ろうとするいたいけなシュウの姿にエレーナ達は、胸がつぶれるような思いだ。
「あっそうだ、シュウ君、これから、学校へ行きましょう」
「でも僕は、みんなから無視されるし、気づいてもらえないし」
シュウは、学校に行きたがらない。
このまま落ち込んでいてもしょうがない。
エレーナはシュウの腕をつかんで無理やり学校に連れて行こうとする。
「何を言っているんですか? そんなの無理よ」
プリシラの制止を振り切り、エレーナはシュウを連れ出した。
「あっ、待ってエレーナさんてば」
プリシラは、慌ててふたりを追った。
教室の前に立った、シュウと、エレーナ。
「これで貴方は、以前のように学校の人達と会話が出来るようになります」
エレーナが、光をシュウにかけた。
シュウは、自分の体を見まわした。
「何も変わらないですよ」
「とにかく、教室で誰かに話しかけてみて下さい」
シュウは恐る々教室に入った。
クラスメイト達が、シュウに目をやった。
「あれぇ、今日は来ているよ」
また、以前のように彼の噂話しをし始めた。
佐倉先生が来て、出席を取った。
「白川君、今日は来ているね」
佐倉先生はシュウにチラリと目をやった。
「エレーナさん、今日はちゃんと出席扱いになりました。
でも、えっ? 何で? 何がどうなっているんだろう?」
見えない物を見えるようにするという天使の能力を知らないシュウ。
「よかったですね」
エレーナにそう言われ、シュウは再び登校をし始めた。
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