エレーナ再びそれぞれの想い
8 なつみの挑発
 黒川は、相変わらずシュウを構う。
千鶴も負けじとシュウに接してくる。
黒川らと親しくするシュウの姿になつみは、面白くない。
美術の授業やプールでの一件後、なつみは、自分でも知らず知らずのうちにシュウを気にするようになる。
クラスメイト達は、シュウと黒川が良い雰囲気だとか、シュウは黒川が好きなんじゃないのかとか、勝手な噂をし始める。
さらには、シュウはなつみが好きだったんじゃないのかとか、実は黒川とふたまたかもなどとその話でもちきりだ。
なつみは、シュウに天使が付いているのも気に入らなかった。
なつみは大の天使嫌いでもあった。
シュウが何者なのか、なぜふたりも天使が付いているのか、なつみはシュウの身辺を調べ始めた。
なつみは、シュウの事といったら、転入時に佐倉先生から紹介された、彼が名門の実業家出身であることしか知らない。
 
 ある時、シュウは黒川と共に下校した。
なつみは、これを見逃さずふたりを追跡開始。
だが、シュウは学校の寮に住んでいるので、校門のところで黒川と別れた。
なつみは、なぜか黒川が気になった。だが、シュウも追跡したい。
シュウは自分と同じ寮に住んでいるので何時でも追跡出来る、そう考えたなつみは黒川を追った。
ついに、黒川の家まで来た。そして、ひそかに家の中をのぞいた。
家の中には、忍の他にクラスメイトの黒川聡美もいた。
「なぜ、黒川聡美がここに?」
そう思ったなつみ。
このふたり、学校でも仲が良く、行動を共にすることが多い。
そう言えば、忍と聡美、共に同じ名字。
ふたりはどういう関係? もしかして親戚?
なつみはあれこれと考えをめぐらしながら、ふたりの会話に耳を澄ました。
すると、聡美はしきりに会話の中で、忍の事をお母さんと呼んでいる。
「お母さん、毎日楽しそうだね。私は、ハラハラしっぱなしだけど」
聡美は、ちょっぴり心配そう。
「本当に楽しい、これもシオミのおかげよ」
見ると、黒川のそばにもう一人いる。
「あれは!」
黒川忍のそばには確かに天使の姿が……
その天使の名は、シオミ・クレハ・グランチェスタ。
「どうして、黒川さんにまで天使が付いているの!」
なつみは愕然とした。
「シオミが私を若返らせてくれた。だからこうして学校に行けるのよ。
本当にありがとう」
忍と聡美は親子。
しかも忍は、天使の能力で若返って、女子高生に成り済ませていた。



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